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ゲルマン人は逆に『温暖な南に理想郷がある』という認識で、アルプスを越えた地中海エリアを憧憬の対象とし、その結果、例えばドイツのサスペンスドラマでは犯人がなぜか強引にマジョルカ島に飛んだり、ヒロインがニースの海岸でピンチに陥ったりする無理矢理な展開が、自然と定番化していったのです。
メニューを開く人類はなぜか『北に理想郷がある』という共通の文化があるらしく、ギリシャ人は黒海方面にヒュペルボレイオスなる民族の理想郷があると信じており、またヒッタイト人はアルメニア方面に同じような民族といると思っており、エジプト人になるとシリアの北側に理想郷があると思っていたらしい。
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そんなわけで、例えばルパン三世では冒頭、全く意味もなくふ〜じこちゃんがモナコのビーチやクルーザーでくつろぐシーンが出てきたりするわけですが、あれは、ゲルマン的文脈では「こいつは勝ち組です」感を端的に醸し出す的確な演出なのです。やはりルパンって素晴らしい。 pic.twitter.com/wBESfPl92f
ベルリンの壁解放直後のドイツ映画『ゴー・トラビ・ゴー』ではトラバントに乗って「憧れのイタリア」を目指す東ドイツ市民が描かれてましたね。主人公はゲーテを尊敬する国語の先生という設定でした。西独のアウトバーンでトラバントが故障、緊急電話をしたら「テープでも貼っておけ」と言われて。
ゲーテも『イタリア紀行』がありましたが、昔の知識人や絵描きもよくイタリアに行っていた印象です。仏にも謎の建物を作っていたおじさん(シュヴァルの理想宮)がいましたが、創造の源泉は「絵葉書の異国の風景」だったようですね。
“Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn”…は「君よ知るや南の国」として日本でも愛されていたはずなのになぜ日本人は北に行くようになったのか。その前は西に憧れていたはず。
アフリカを出てヨーロッパを北上した集団が戻って来ないから、理想郷があると思ったとか。 もっとも暖かい時代に食糧となる獲物を求めて北上した集団は、寒さが厳しくなって南下して戻ることも出来なくなって、古老の言い伝えにある南方の地を理想郷と思い込んだのか。 色々理由はあるのでしょうね。