彼と踊るのは、きっとこれが最後。掛け合うように、騙し合うように、愛し合うようにダンスを奏でてきた。ただリズムを刻むのではない。呼吸がひとつになり、血脈が同じになるような一体感。彼とでない感じられないひととき。でも彼と踊るのはこれが最後。私の生命も、これで最期。 #小説 @Kim414141

「このまま僕を捨て置いてくれ」と言い放つ。何もかも上手くいかない世の中に飽き飽きだ。彼女は何も言わず、その細い指で僕の襟元を掴んだ。そのまま、ずずず、と引きずってゆく。そもそも彼女とは一体誰なのか。目の端に見知った肢体が見えた。ああもう戻れないのだと理解した。 #小説 @Kim414141

朝まだき、淡い光にいだかれて、まぶたに描く儚き夢は。こぼれ落つ、吐息のように消え落ちて、蒼い傷みが取り残された。貴方とは、いまだ出会えぬままなれど、その唇の熱さが恋し。夢は夢、彼は居ないと思いつる、されど奇跡を諦めきれず。いつの日か、目覚めのときを待ちわびる。 #小説 @Kim414141

正直、王子様に期待してなかった。と、白雪姫は思う。ただ寝て待ってるなんて性に合わないから、小人を使って身辺調査したけど、想像以上に無能な様子。頭の悪いボンボンとの結婚なんて真っ平。お伽噺はこれにてお終い。姫はむっくりと起き上がり、新しいストーリーを歩き始めた。 #小説 @Kim414141

ねぇ、あたしと結婚するんでしょ？なんで逃げようとするの？あたしはいつも、大事に大事に、身も心も捧げて尽くしてるってのに。なんで男って、利用するだけ利用して、最後は逃げようとするの？あなたは逃げないよね？逃さないよ？このまま二人、最期まで。永遠を誓い合いましょ？ #小説 @Kim414141

どんなに待っても、彼は戻ってこないかもしれない。音信不通だから、待つべきなのか待つ必要がないのか分からない。だから諦められない。でもある日、彼がとうとう現れた。川から現れた彼は、人でないものになっていた。私を手招く。あぁそうかと理解して、私は一歩を踏み出した。 #小説 @Kim414141

辛く苦しいことばかりが、ここぞとばかりに連なり、脆弱な私の胸中をかきむしり、刺靑のやうに記憶に瘢痕を遺す。心は血を流さないのが、殘念でならない。目に見えればきっと、どれだけ流血沙汰の事態か分かるといふのに。貴方の殘酷な仕打ちも、罪として皆に認知されやうものが。 #小説 @Kim414141