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「赤いモンシロ、黄色いアゲハ」 夜の歌 その30 #本格ファンタジー #マイクロ本格ファンタジー #マイクロノベル

鞍馬アリス@kurama_alice

赤いモンシロチョウの羽を焼いて食べると、アップルパイの味がする。教えてくれた義姉は、数年前に黄色いアゲハ蝶を追って、ヨーロッパへと消えた。兄は心配していたが、数ヶ月前に離婚届が配達されて来て、寝込んでしまった。先日、義姉から葉書が届いた。ありゃバナナチョコだ、とだけ書かれていた。

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渚に佇み爪を研ぐ。途中で爪が欠ければ嵐となり、欠けなければ快晴が続く。水平線の彼方から船がやって来ている。船団だ。爪が欠けるわけにはいかない。焦りと緊張から手が震える。一陣の潮風が吹き、手元が狂う。爪がほんの僅かだけ欠けた気がした。空が俄かにかき曇り、雷鳴が轟きはじめた。

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「翠玉雨龍譚」 夜の歌 その27 文芸三題噺番外 雨・エメラルド・あと5分 #本格ファンタジー #マイクロ本格ファンタジー #マイクロノベル #ノベルアッププラス

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エメラルド色の雨が降りはじめた。こりゃ珍しいと主人は笑う。客人の絵師は、雨が溜まり、立体となる様を静かに眺めている。それはやがてエメラルド色の龍になる。あと5分もすれば、羽ばたくだろうか。その姿を是非、絵にしてみたいもの。手を打ちたたき喜ぶ主人の横で、絵師の手がムズムズ動きだす。

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関節部が結晶になっている。水色に輝くそれに学名はない。何人もの学者が試みたが、学名をつけるには至らなかった。結晶の中に少年がいて、名前をつけるなと頼むのだと、彼らは去り際に呟くのだ。学者たちは儚い。彼らは全員自殺した。それが、私には見えない少年の謀りによるのかは、知るよしもない。

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隔世遺伝で胸から鳩が生まれる。鳩は薄紅に近い白色で、胸から生まれると、すぐに空へ飛び立ってしまう。居座る鳩はいない。例外なく去っていく。寂しいが、生みの親というのは、そんなものなのだろう。世界の鳩の何割かが、間違いなく自分の胸から生まれたと考えると、少しだけ、寂しさが紛れる。

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幽体離脱をして、空に向かってゆっくり落ちていく。雲ひとつない青空は、永遠に終わらないゴールテープ。生前唯一の特技だった千里眼で、数年前に離脱した自分の身体を覗いて見れば、真下で棒立ちになって朽ち果てている。ああ、汚い骨。戻れたとしてもありゃダメだと笑いながら、私は今も落ちている。

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死なずの井戸と申します。当主は皆、死にかけますとこの井戸に投げ込まれます。井戸の底には変若水が流れておりまして、飲めば若返り、死なぬ身体になります。死なずは皆、歌を好みます。ええ、あの鶯のような。全て死なずの歌声です。どうです坊ちゃま? 死なずになるのも悪うございませんでしょう?

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黒い帳の奥では、人形たちの呻き声が聞こえる。人形たちは人形師に殺されている。頭が弾けていたり、四肢がなかったり、ナイフが刺さっていたり。人形の匠によって無惨に殺された人形には、何者でもない魂が宿る。彼らは無念の思いを吐き出しながら、黒い帳の奥に居場所を見つけ、呻き続ける。永遠に。

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吸血鬼について記された本の頁で薬指を切った。傷口から溢れる血に、静かに舌をつける。痛みと共に、錆びた、しかし甘い血の味がした。耳元で、ようこそ我らが一族の許へと、美しい声が聞こえる。吸血鬼に認められたのか。幻聴を吉兆として悦んだからか。黄昏の光すら、いつになく眩しく思われた。

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竜の背中に森と川がある。森の奥には、青煉瓦作りの小さな家ぎ建っており、中では娘が一人で住んでいる。娘は森の木を薪にして火を起こし、料理を作る。火は竜の背中を軽く炙る。竜はそれが嫌で堪らないのだが、娘が作る山菜焼きや炙り魚が極上なので、腹に背は変えられぬと、我慢しながら生きている。

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中指の先から姉の夫が生えて来た。姉は面白がって、付き合ってしまえという。そしたら離婚できるからと言うのだが、楽観的すぎる気がする。姉の夫は少しずつ成長している。今は鎖骨のあたりまで出ている。時々欠伸をするのだが、凄く癪に障る声を出す。姉が離婚したがる理由が、ほんの少し理解できた。

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蜜蜂が飛び込む花の奥には、ロココ調の宮殿が建てられている。建材は全て花粉だ。蜜蜂は宮殿内で花の蜜と雄蕊雌蕊の舞姫たちの歓待を受けながら、建材である花粉の一部を身体に着飾り、また別の宮殿へと向かう。かくして蜜蜂は蜜を、花は受粉の機会を得て、花内の宮殿はますます繁栄を誇るのである。

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恋人だと思っていた魔女が、朝になったらいなくなっていた。壁にかけられた一枚の魔法陣の中央に、口紅で旅に出ますと記されている。慌てて魔法陣に指を触れると、一瞬だけ、広大な砂漠の中央を歩む彼女の姿が見えた。つまらない女と愛し合うより旅の方がマシ。いつかの晩に聞いた、魔女の言葉が蘇る。

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透き通った石の中に、龍の皇子が眠っている。銀色の逆鱗は麗しく、閉じられた瞼は薄虹色に輝く。万年に一度、龍は涙を流す。涙は大地に落ちて石となり、中に龍の皇子を宿す。今代の龍が死ねば、皇子は目覚め、次代の龍となる。ですから割っては大事ですぞと、石屋の老人は愉快げな口調で私に注意する。

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空と海の婚礼はつつがなく行われた。海は空を呼び、空もまた海を呼んだ。魚には翼が生え、鳥は鱗に覆われた。仲人たる大地は、空と海の交わりをただ眺めるのみ。今や空と海は互いの過去を捨て、かつて何かであった生き物たちを従えて大地と対峙している。静寂が次なる婚礼の幕間のように下りはじめた。

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